2008.04.28 Mon
DVD:映画 『善き人のためのソナタ』
これは名作です!!(私ってば、とっても評価が甘いような気がしますが、これは間違いなく佳作ですよ。)
原題は「他のものの命」。いえ、Das Leben der Anderen(The Lives of Others)、複数形ですから、ニュアンス的には「多くのものに生かされる命」こんな感じでしょうか。私の日本語センスも全くありませんが、とにかく直訳ではアトラクティブではないので、「善き人のためのソナタ」というタイトルを与えられた映画です。
―「この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない」
原題は「他のものの命」。いえ、Das Leben der Anderen(The Lives of Others)、複数形ですから、ニュアンス的には「多くのものに生かされる命」こんな感じでしょうか。私の日本語センスも全くありませんが、とにかく直訳ではアトラクティブではないので、「善き人のためのソナタ」というタイトルを与えられた映画です。
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―「この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない」
いえ、悪人とは「なる」ものではなく、「社会制度が悪人たらしめることがある」と、この物語は教えてくれるのです。
アカデミー外国語映画賞をはじめ、様々な映画賞を受賞しているのも納得の作品です。
心にジーンと染み渡るヒューマンドラマ。人物の掘り下げもステレオティピカルではなく、映画用に作られた「キャラ」という感じもしませんので、実話だと言われれば信じてしまったかもしれません。
舞台は1983年、東西冷戦下の東ベルリン。
そう聞くだけで明るい話は想像しにくいのですが、「そういう思い込み」があるからこそ、この「善き人のためのソナタ」の物語に、救われるのかもしれません。イデオロギーがどうとかいう前に、人は何かのために生きることができるし、変わることもできる、それが、たとえ国家を裏切ることであり、自分の現在の地位を脅かすことだとしても…。
こんな風に書くと、体制に反発した若者の物語のような感じになりますが、主人公はシュタージ(東独秘密警察)の中年独身大尉。それがまたいい雰囲気を醸してるんですよ。
驚きなのが、監督・脚本のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク(なんて長いお名前! お名前が示すように爵位をお持ちの方のようです)が1973年生まれであること。しかも、デビュー作!! ありえません。とても30代前半の感性とは思えない。
映画監督にありがちな「人間とはこうあるべきだ」とか「正義とは…」といった絶対的な視点を持ち込んでいないところに、この監督のセンスを感じます。主人公が東ドイツを「裏切って」いく過程の感情の流れは複雑で、寄せては返す大波小波、あるいは静謐なさざ波のようで、私のような若輩者が共感できるなどと軽々しくは言えない描き方です。
主人公ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエは、昨年胃癌で急逝されたとか。ミューエは旧東独で実際にシュタージの監視下におかれ、壁の崩壊当時には反政府デモを指導された経験もお持ちだったようです。彼自身が、俳優として自由な芸術を渇望した過去があったために、抑えた演技に心を揺さぶられるものがあったのかもしれません。
本当に、素晴らしい演技でした。
「ソナタ」をヘッドフォン越しに聴き、自然に涙を流すヴィースラーに、心を揺さぶられました。きっと、何に対して流す涙なのか、彼自身にも分らなかったに違いない。こんな単純な真実に、なぜこれまで気付けなかったのかと心から後悔するとき、ひとはあんな涙を流せるのかもしれません。
監視対象の芸術家の部屋に忍び込み、ブレヒトの本を持ちだして自宅で頁をめくれば、自分たちが「国家」の名のもとに弾圧してきたものが、「共産主義の敵」などではなかったことに、改めて気付かされる……。なんともやるせないです。
やめましょう。
優秀なレビューが他にたくさんありますので、そちらにお譲りいたします。でも、百のレビューより、オリジナルに勝るものはありません。ぜひご覧ください。
アカデミー外国語映画賞をはじめ、様々な映画賞を受賞しているのも納得の作品です。
心にジーンと染み渡るヒューマンドラマ。人物の掘り下げもステレオティピカルではなく、映画用に作られた「キャラ」という感じもしませんので、実話だと言われれば信じてしまったかもしれません。
舞台は1983年、東西冷戦下の東ベルリン。
そう聞くだけで明るい話は想像しにくいのですが、「そういう思い込み」があるからこそ、この「善き人のためのソナタ」の物語に、救われるのかもしれません。イデオロギーがどうとかいう前に、人は何かのために生きることができるし、変わることもできる、それが、たとえ国家を裏切ることであり、自分の現在の地位を脅かすことだとしても…。
こんな風に書くと、体制に反発した若者の物語のような感じになりますが、主人公はシュタージ(東独秘密警察)の中年独身大尉。それがまたいい雰囲気を醸してるんですよ。
驚きなのが、監督・脚本のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク(なんて長いお名前! お名前が示すように爵位をお持ちの方のようです)が1973年生まれであること。しかも、デビュー作!! ありえません。とても30代前半の感性とは思えない。
映画監督にありがちな「人間とはこうあるべきだ」とか「正義とは…」といった絶対的な視点を持ち込んでいないところに、この監督のセンスを感じます。主人公が東ドイツを「裏切って」いく過程の感情の流れは複雑で、寄せては返す大波小波、あるいは静謐なさざ波のようで、私のような若輩者が共感できるなどと軽々しくは言えない描き方です。
主人公ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエは、昨年胃癌で急逝されたとか。ミューエは旧東独で実際にシュタージの監視下におかれ、壁の崩壊当時には反政府デモを指導された経験もお持ちだったようです。彼自身が、俳優として自由な芸術を渇望した過去があったために、抑えた演技に心を揺さぶられるものがあったのかもしれません。
本当に、素晴らしい演技でした。
「ソナタ」をヘッドフォン越しに聴き、自然に涙を流すヴィースラーに、心を揺さぶられました。きっと、何に対して流す涙なのか、彼自身にも分らなかったに違いない。こんな単純な真実に、なぜこれまで気付けなかったのかと心から後悔するとき、ひとはあんな涙を流せるのかもしれません。
監視対象の芸術家の部屋に忍び込み、ブレヒトの本を持ちだして自宅で頁をめくれば、自分たちが「国家」の名のもとに弾圧してきたものが、「共産主義の敵」などではなかったことに、改めて気付かされる……。なんともやるせないです。
やめましょう。
優秀なレビューが他にたくさんありますので、そちらにお譲りいたします。でも、百のレビューより、オリジナルに勝るものはありません。ぜひご覧ください。
| 時々、まったりと映画鑑賞(DVD) | 16:32 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑









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